BS1スペシャル 「改善か 信仰か~激動チベット3年の記録~」(後編)

半年前に訪れたチベットの変化。共産党のスローガンが大地のいたるところに見られた。ラルンガルンゴンパの正門には検問所が作られていた。

チベットの様子(2017年)

ラルンガルンゴンパの門の入り口には警察が常駐し人を監視していた。再び本格的な修行僧の家の取り壊しが行われていた。取り壊しを行っていたのは、チベット族の人。当局によって集められ労働者の日当5000円。行き場を失う僧侶たち。抗議の自殺を下との噂が流れた。

諸行無常から状況を理解するしか無い。5000人近い僧侶が寺を追われる。追放された修行僧が撮影したとされる映像では皆泣いていた。ツェテンが暮らす場所は無事なのか。家は無事だったが、他の修行僧がいた。大通りが建設され、コーヒーショップを設け、将来的には外国人の観光者も誘致するという。僧院の観光地化。中国の内地から漢族の観光者が増え始めていた。チベット仏教には関心はないが、景観は美しいという。

牧草地にはプレハブ住宅が作られていた。行き場のない尼僧たちが暮らす。有刺鉄線が張り巡らされていた。修行僧の間には苛立ちが広がっていた。チベット僧が漢族に殴りつけた。灌頂会の会場、ここで法要を行われることはなくなった。

プンツォ・タシは僧院に残っていた。取り壊しは4000個と言われていたがわからない。余計なことを話すと僧院に大きな悪影響をもたらす。自宅の目の前にまで及んだ。平等と慈悲、チベット仏教の教えをインターネットで配信し続けていた。高僧の講義を配信していた。仏具を扱う売店。父から頼まれた仏具を探していた。約束から1年後、父ティンレーが亡くなり、3ヶ月後母アゲも亡くなった。「両親は生前修行を行っていたが、なくなる時、とても穏やかだった。」父は土葬に、母はハゲタカに葬った。輪廻転生を信仰していた父と母だった。チベット仏教の教えの発信を継続して行う。チベットの文化を発展させたいという希望を持っている。僧侶の役割は大きく役割は大きいと。

中国共産党の施策が拡大

移住政策

2018年1月1年、中国共産党、貧困撲滅宣言。年間6兆円もの金が地方に注がれていた。辺境の大開発が始まっていた。ときには、4000mのトンネルを作られ、一週間かかった峠越えが15分に短縮された。共産党「より開放的な考え方をもたせ、古い習慣などは廃止させ、より良い方向に変える。」遊牧民の集約移住が始まっていた。脱貧困村。同じ形のちベット風の住居が政府の金で作られた。遊牧民520人あまりが移住された。ここに祈りの施設はないという。高原の遊牧民は生産性が低く、ここに移住した貧困者は産業の発展と現金収入を得るチャンスに恵まれる。金儲けの熱意を奮い立たせることが出来る。大人も皆夜間学校の教育が義務付けられた。中国社会に適応するために教育を受ける。村民は幼い頃から勉強不足で文化や知識が不足している。国家の政策を学び意識を変える。脱貧困村の義務として中郷共産党の党首習近平の肖像画が掲げられていた。山から降り、月収5000円程度の仕事を政府から与えられた。水道や電気もあり便利だという。長年、仏教を信仰をしてきた老人、党首から恩を受けて深く感謝しているという。

小学校、教育

チベットの子どもたちにも進む共産党の改善。伝統的なチベットの暮らしから離し、寮に入れさせ、愛国心を教える。生徒には生活手当3000円程度が支給される。遊牧民の子どもたち、国家の支援策は充実し、良い暮らしをする。地域の先駆者になることを期待されているという。

親元では話さない中国語を話し競い合う。国への愛国心を育てるため愛国主義を教える。有利な条件で人生を歩めるため教育を行う。県や州などで活躍をする。家族を恋しく思うのは最初だけ。

チベットの様子(2018年)- ラルンガルンゴンパ

ラルンガルンゴンパ、コンクリート造りの展望台、一望できる階段。修行僧の不安と警戒心。撮影がままならない。かつてのお経が聞こえた聖地。トラックの音が鳴り響く。「諸行無常」ただ祈り続けた。

修行僧のツェテンはどこに消えたのか。僧院の取り壊しから2年余り彼の実家を訪ねてみた。僧院を追われたツェテンは行き場もなく家に帰ってきた。僧院を出るときは本当に悲しかった。高僧や家族同様の友人と別れ辛かった。仏教の勉強は独学でしている。病気を患っていたウガも実家にいた。体調は一進一退。他者を傷つけないという慈悲の戒律を守り続けていた。最高指導者が掛けられ、布に掛けられていた。妹のユシィは小学校6年生になっていた。民族衣装に身を包んでいたが、今は洋服を来ていた。勉強ばかりで放牧にはいかなくなった。中国語の学習は進学に繋がると学校で教えられていた。冬休みには別の町に出ていき中国語を学びに行く。小学校を卒業した後は50km離れた中学校の寄宿舎に入る。家族との遊牧民としての暮らしは残り僅かだった。

<着想 2019-12-01>
社会がいいというものが本当に幸福なのか。大衆にとっての幸福が自分にとっての幸福なのか。なぜそれを行うのか。なぜそれを選択するのか。

チベットの様子(2018年)- 徳格印経院

300年にわたり、チベット族が礼拝に訪れる信仰の聖地。チベット族の精神世界と文化の源がここにある。1000年前インドから伝来したお経をチベット語に訳した木簡(もっかん)が保管されている。チベット文化の書籍と経典がすべてここにある。今も印刷に使われている。貧困撲滅を目標とする当局は、この遺産に目をつけた。観光地化に向け、「文化立県」のスローガンを掲げた。世界文化遺産に登録される価値がある。印経院ですられた仏の教えが印刷され売られていた。高額で売れる。本来は修行僧が使うもの。この地の観光地化に向け公共のバスが整備された。豊かになりたいなら未知を作れ、貧困脱出のために観光地化を行う。建設ラッシュが起きている。3000客室確保を目指すホテル。15年前の街、周りに高い建物は一切なく古くからの時間が流れていた。景観工事で8億円を投じ、観光化を進める。チベット族女性テレビ局員。数少ないチベット族の共産党員。遊牧民の街で生まれた。貧困を抜け出すため、中国内地に移り住み漢族と同じ教育を受けた、そして専門学校を卒業し、待望の共産党員になることを認められた。等が決めた法律などを広める。彼女はテレビ局の副局長として指導する。当院になるために信仰から背を向けた。共産党員の宗教への信仰は認められていない。生きていく限り自分の価値を高めたい。生きがいを追求したい。

チベットの様子(2018年12月)- ラルンガルンゴンパ

プンツォ・タシはラルンガルンゴンパから姿を消していた。600km離れた西寧という大都会に流れ着いていた。待ち合わせに指定されていたのはホテルの一室。僧院を出るように通告された。何があったかについては多くを語らなかった。「将来戻れる時が来るのかわからない。うまく説明できない。仏教は、人の心の力は宇宙で最も能力があると説きます。人が心で真剣に望み、祈り続ければ、世のすべてのものを変えられる。自身の信念に確信をもち、努力すれば必ず道は見つかる。」

ツェテンは一人で瞑想する。「多くの人は、現世が非常に大切と考えています。それでは執着、欲望、煩悩に苦しむ。来世が重要と説く。この世で私は大した役が立ちません。しかし、しっかり修行すれば、来世の役に立つはず。」

チベットの様子(2019年01月)- ラルンガルンゴンパ

観光地化の工事は更に進んでいた。観光客向けの階段が完成していた。大型の宿泊施設と思われる建物が姿を現した。また商業施設だと思われる建物も姿を現した。漢族の観光客が、1000年続けられてきた信仰の世界がこの3年で観光資源と化していた。国家の意思は民族の精神世界をも変えてしまうものなのか。僧院は文明の明かりに包まれた。